舞台「吐露」(2023)の魅力:演者さんのこと

 舞台「吐露」(2023)の魅力の1つは、何と言っても素晴らしい4人の出演者の方々だと言えます。そこで私がAチームの公演中に感じた演者さんのことを語ってみたいと思います。なおネタバレ全開です。また生意気な内容だと感じさせてしまったら申し訳ありません。(五十音順)

大対源(オサム)

 大対源さんが演じられるオサムは、この4人の人間関係で一番のキーパーソン。おそらく彼がいたからこの4人はずっと繋がっていた、そんな気がしました。だからこそ心の内が一番表出しにくい人物だとも言えます。大村さんの眼差しはとにかく優しい。そして妙に達観していて飄々としている。一歩間違えると話がウソくさくてばらけてしまうような物語を、うまく収めてしまう空気感を作ってらっしゃいました。そして演じ方が実にサラッとしているんですよね。中でもテンパとのイコールな関係性が感じられるのが、すごく気持ちよかった。心の底からテンパと笑い合える、そしてテンパにお互い様だといえるフラットな関係性。だからラストの感動につながる。オサムだったらどうするんだろう? 観客もあそこで一緒に考えてしまう。今回の公演で一番印象に残った俳優さんでした。映画『ミッドナイト・ラン』でデニーロが演じた役とか、『スケアクロウ』でG・ハックマンが演じた役とか、そんな役柄を演じられたら、なんて思いました。
 ところで大対さん、3チーム全部に登場するトリプルキャストなんですよね。演出家が同一とはいえ、微妙に演出プランは違うだろうし、しかも1日3回公演? 5日で15回?? 考えただけで倒れそうです(汗)

風間庸平(ケン)

 ケン役の風間庸平さん。エマ様演じるユリの元カレ。リーダー的なポジションなのかもだけど、そんなに巧く立ち回れる感じではなく、直情的で情にもろい。でもそれをステロタイプなチンピラっぽくしなかったところが好印象でした。ケンはヤクザでもチンピラでもありません。そのあたりのバランスを間違えると、ただうるさくなってしまうし、黒谷の側に足を踏み込んう存在になってしまうと、役柄の意味が変わってしまいます。ケンはずっとテンパをかばい、ユリからも頼られる存在。なぜ別れてしまったかはわからないけれど、憎み合って別れたわけではないということは察することができます。そんな愛すべきケンという人物を魅力的に演じてらっしゃいました。なおツーショット撮影会では、エマ様と並んで毎回参加者がいらっしゃいました。それも納得の男優さんです。

二葉エマ(ユリ)

坊屋たいと(テンパ)

 「シロツメクサ」のつながりから、みるのが楽しみだった坊屋たいとさん。テンパ役は演じる上でサジ加減がかなり難しかったと思います。知的障害、何かしらの発達障害、それともただ単にとろいだけなのか、ここをぼんやりとさせながら、かわいそうなヤツと思わせない、観客とフラットな関係性をもたせたところ。ここが坊屋さんの表現力の素晴らしさだと思います。今回の物語の謎をめぐっては核心部分に関わっていた訳なのですが、実は2回ほど、自分でそれを言い出そうとしているところがあったように思います(勝手に答えを言われたり、遮られてしまったり)。エロに弱く、いつも想定外なことをしてしまう。けれど耳がよくて、神様の返事まで聞こえてしまうようなテンパに説得力を与えられたのは、その中性的なルックスをいかしながら、実に味のある話し方と動き方だったからだと思いますし、そこにクスッと笑える爽やかさまで加味できたのは、坊屋さんならではだったのでしょう。